第8章 15 Minutes Focus 

Ⅱ 15分に集中すること

―緊張状態でリラックスすること―

1月31日。2020年になって初めてのメンタルトレーニングを実施した。

まずは花咲さんとのコラボセッションの復習。

試合の大事な場面でポジティブな状態になるための「心のスイッチ」をつくったが、それを具体的に実践でどのように応用するのか解説した。

イチローは、バッターボックスに入るときに屈伸をしてからバットを立てて侍ポーズをとるルーティンをしていたが、このポーズだけを真似しても意味がない。

「緊張状態」「ポーズ」「セルフトーク」「最高の状態」を潜在意識の中でつなげておく必要がある。

「緊張状態の中でリラックスする」という絶妙なバランスの中で最高のプレーができる。その状態に入るための「心のスイッチ」をチーム全体で共有して、チームの力でパフォーマンスを最大化する方法論を追求していきたい。

―15分間のフロー体験―

今回は私が最近、取り組んでいる15 Minutes Focusを紹介した。

私は英語力向上のために、毎日英語で15分間フロー状態に入るということに取り組んでいる。

この効果は絶大で、これまでは「今日は緊急の仕事が入って忙しかったし」など英語学習をしない理由ばかりを考えていたが、今ではどんなに忙しくてもつい思わず英語をやってしまうという習慣を作ることができた。

歯磨きと一緒で、やると気持ちいいし、やらないと気持ち悪いから、とにかくやるという感じである。

大人になって記憶力が低下したと思っていたが、最近は記憶力がよくなったような気がしている。やはりフロー状態に入ると記憶力が劇的に良くなるので、学習効果は抜群にあがる。

元メジャーリーガーのトルネード投法の野茂英雄投手は、自分が投げた数万球のボールを全て記憶しているという記事を読んだことがある。これは単純に記憶力がよいという話ではなく、フロー状態でプレーしているからだと思う。

野球は記憶のスポーツでもある。よいフォームを記憶して再現性を高める。ボールの軌道を記憶して反応できるようにする。一流選手は、常にフロー状態でプレーしている。

たかが15分、されど15分。

毎日意識的に15分のフロー状態が作れるようになれば、生活が劇的に変わる。

逆に言えば、たった15分のフロー状態が作れないのであれば、大事な場面で120%のパワーを出すことは難しいだろう。

ところで本日は17時からメンタルトレーニングということもあり、実際にボールを使った練習は15分程度だった。

これは偶然ではあるが、選手たちに意識を高めてもらうには絶好の機会だったと思う。

授業が終わって、ユニフォームに着替えて、まずはランニング。

その後のキャッチボール、トスバッティング、バント練習というメニューは15分程度である。

15分しかないから適当に流して終わるのか、15分しかないからこそ、その瞬間に本気で集中するのかによって全然違ってくる。

プロ野球選手は、キャッチボールをすごく大切にすると聞く。相手の胸のとりやすいところにボールをコントロールして投げる。体の中心でボールをしっかりととる。トスバッティングもゴロをしっかりと捕球してすぐに投げる。1球1球を大切にすることが、大事な試合でのワンプレーにつながってくる。

これからの時代、部活動の時間はどんどん短くなっていくだろうし、長時間の猛練習で強いチームを作るという手法は通用しないだろう。

だからこそ15 Minutes Focusを浸透させ、瞬間瞬間を大事にすることが重要になってくると思う。

高校野球での15分集中チャレンジング。ここからきっと何かが起きるはずである。

―15分集中メンタルトレーニング―

2月7日には、花咲さんとの2回目のコラボセッションが実現した。

まずは15 Minutes Focusの振り返りから。

本日のメンタルトレーニングまでの15分の練習は集中できたのか?

先週のメンタルトレーニングからの1週間で、15分を集中して過ごすことができたか?

できた人もいれば、できなかった人もいる。どんなメニューがよいのか、いつやるとよいのかなど、仲間の成功や失敗から多くのことを学んだ。

15 Minutes Focusは、単に15分決めたことをやればよいということではない。

大切なのはフローに入ること。そのためには緊張感を持ちつつ、遊び感覚で楽しむことが必須である。この感覚をつかむことで、練習の質や試合でのパフォーマンスを向上させることができる

15分集中のために、どんなメニューをするのかについては、具体的なメンタルトレーニングのメニューのオプションがあるとよいと考えた。そのため、今回の花咲さんのセッションでは、1分、3分、5分でできるメニューをたくさん用意してもらった。

コップ、お箸、折り紙、けん玉、お手玉、など、様々な道具を使って遊び感覚で楽しくトレーニングする。その際には、メトロノームをならし、1秒がどれぐらいなのかの感覚を高めていく。

例えば、やっこさんのような簡単な折り紙でも1分で完成させようと思うと超集中状態に入らないと無理である。子どものときにした遊びも時間制限があることでゲーム性が生まれ、自分にプレッシャーを与えることでしっかりとしたトレーニングになる。逆に時間を決めずにダラダラやったら意味がない。

さらにはフローに入るには緊張した状態でリラックスすることが大事である。

休憩後にはリラックスする方法として自律訓練法、セルフトーク、呼吸法、瞑想などもトレーニングした。

また、ナンバータッチ、アルファベットタッチ、線対称、隠し絵、100マス計算など、プリントを使った脳トレ系のメニューもやった。

短時間にこれだけのメニューができるのは一つ一つは1分から数分程度の短いものだからである。身体を動かすもの、リラクゼーション系、脳を動かすもの、さまざまなトレーニングがある。さらには、素振りやシャドーピッチングなどの野球の動きや、筋トレ、ストレッチなどを加えて、15分のオリジナルメニューを作って15分集中に取り組んでほしい。

最後は花咲さんの美声で誘導瞑想のクリエイティブイマジネーションのセッション。

濃厚な2時間のコラボセッションを締めくくった。

刈谷工業野球部に15 Minutes Focusを導入する最大の狙いはフローに入る感覚を高めること。さらには瞬間瞬間を大切にできるようにすること。一人でやるよりもチームでやった方が効果は高いだろう。

3月になれば、いよいよ春の大会が始まる。

花咲さんの協力を得て本格的なメンタルトレーニングを取り入れた刈谷工業が、これからどのような戦いを見せてくれるのか本当に楽しみである。